2026年3月、JR東日本が運賃改定を予定!

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JR東日本の大型運賃改定

2026年3月14日にJR東日本の運賃改定が予定されています。
参考:JR東日本 運賃改定のお知らせ
   【電子ブック】JR東日本運賃改定のご案内

JR東日本は、2023年に首都圏エリアで運賃改定をしたばかりなので3年ぶりになります。2023年の運賃改定理由は、駅のホームドア整備等を行うためのバリアフリー料金制度の利用と発表されています。それ以前も消費税などで値上げがあり、近年では数年おきに運賃改定が行われているという印象です。
今回の運賃改定は、JR東日本の全エリアが対象となりますので、影響が大きくなります。

この記事では、運賃改定の理由や、運賃改定の影響、企業が支払う通勤手当への影響などを解説します。


運賃改定の概要

2026年3月値上げ実施

JR東日本は、2026年3月に運賃改定を実施する予定です。
過去には1989年、1997年、2014年、2019年に消費税による運賃改定を行い、最近では2023年に鉄道駅バリアフリー料金制度利用のために運賃改定を行いました。

これまでは法制度対応を理由とした値上げが中心でしたが、民営化以降、経営判断による全面的な値上げは初めてとなります。
今回の2026年3月の運賃改定は、JR東日本がコロナ禍の影響による利用者減少やエネルギー価格・物価の上昇、設備投資の必要性、持続可能な経営体制の確保など複合的な要因を背景に実施されます。
参考:JR東日本ニュース「運賃改定の申請について~2026 年 3 月の運賃改定に向け、手続きを開始しました~」

7.1%の改定率(値上げ率)と影響範囲

今回の運賃改定は、全体の改定率が7.1%ですが、運賃区分・区間・距離によって改定率は大きく異なります。
運賃区分別の平均改定率では普通運賃7.8%、通勤定期12.0%、通学定期4.9%となり、通運賃、通勤定期が大きなげとなっています

区間については、山手線区間・電車特定区間・幹線・地方交通線という区間がありましたが、山手線区間と電車特定区間(一部)が廃止されて幹線に統合されます。
山手線区間と電車特定区間は、利用者が多く競合路線が多いことから今まで料金が低く抑えられていましたが、幹線への統合により大幅な値上げとなります。
普通運賃の平均改定率は7.8%ですが、区間別では山手線内区間から幹線への改定で平均16.4%、電車特定区間から幹線への改定で平均10.4%、幹線区間は平均4.4%、地方交通線は平均5.2%となっています。改定率は平均なので、実際の乗車区間では変動があります。

幹線の普通運賃では、最短 1〜3 km 区間が《IC 147 円→155 円》、26~30 kmが《IC 506 円→528 円》となっています。

参考:「運賃改定の申請について(補足説明資料)」2024年12月6日 JR東日本

 

運賃改定の背景と理由

2024年4月、国土交通省による「収入原価算定要領」の改正に伴い、設備投資・人件費・災害復旧費等を柔軟に原価へ反映できる制度設計となりました。これにより、運賃上限の見直し(値上げ)が認められやすい環境が整えられたといえます。
  
JR東日本では、運賃改定の主な背景として以下の点を挙げています。  
・鉄道事業の再生および復権  
  安全性とサービス品質の向上  
  生産性の強化と財務体質の改善  
  運賃水準の維持  
・コロナ禍に伴う経営環境の変化  
・安全な鉄道運行のための安定的な投資とメンテナンスの必要性  
・運転事故や輸送障害の低減への対応  
・設備の老朽化、自然災害の激甚化、多様化する利用者ニーズおよび人的リソース不足への対応  

JR東日本全区間の値上げ

2023年のバリアフリー料金制度の活用に伴う運賃改定は首都圏に限られていましたが、2026年3月の運賃改定は範囲が広がり、地方も含め全路線が対象になります。

普通運賃の改定内容と具体例

普通運賃は平均7.8%の改定率ですが、10kmまでは4.7%の運賃*¹引き上げ、11~600kmは賃率*²を4.7%引き上げ、601km以上は据え置きとなります。価格はIC料金がきっぷ料金以下となるよう設定されます。

*¹運賃とは「人または物品の運送(場所的移動)に対する対価」と定義され、駅から駅まで料金を指します。
*²賃率とは、Km当たりの距離単価を指します。

以下は東京駅からの普通運賃の新旧比較の一例です。東京近郊は「山手線内」、「特定区間」があるので改定率が異なります。

区間 現行(IC料金) 改定後(IC料金) 差額
東京~新宿 208円 253円 45円
東京~横浜 483円 528円 45円
東京~大宮 571円 616円 45円
東京~千葉 659円 715円 56円
東京~小田原 1,980円 2,090円 110円
参考:「運賃改定の申請について(補足説明資料)」2024年12月6日 JR東日本

初乗り運賃はいくら上がる?

初乗り(1~3km)運賃に関しては、ICは現行146~147円が改定後155円で+8~9円、となります。
きっぷでは、現行150円が改定後160円で+10円となります。
初乗り区間で毎月10日往復する場合は、160円~200円の負担増になる計算です。

特定区間の一部廃止

首都圏に設定している「電車特定区間」および「山手線内」の運賃は、国鉄時代に他の鉄道会社との競合などを考慮して、基本的な「幹線」の運賃より割安に設定されていましたが、今回の運賃改定により「幹線」に統合し「電車特定区間」「山手線内」が廃止されます。

出典:JR東日本ニュース


幹線への統合に伴い改定率は、電車特定区間:普通運賃10.4%、通勤定期13.3%、山手線内:普通運賃16.4%、通勤定期22.9%となります。

出典:JR東日本ニュース

廃止される特定区間と維持される特定区間

特定区間の廃止は、他社と競合しない又は利用者が少ない区間が対象となります。今回廃止される特定区間は、以下の計18区間となります。

廃止される特定区間(計18区間)  
 上野・日暮里  ~  成田 2区間
 新橋      ~  田浦・横須賀・衣笠・久里浜 4区間
 浜松町     ~  田浦・横須賀・衣笠 3区間
 田町      ~  田浦・横須賀・衣笠 3区間
 品川      ~  田浦・横須賀・衣笠・久里浜 4区間
 横浜      ~  田浦 1区間
 渋谷      ~  桜木町 1区間

以下の競合路線のある又は利用者の多い区間は、引き続き特定区間として設定されます。

今後も引き続き設定される区間(計12区間)  
 東京        ~ 西船橋 1区間
 新橋・浜松町・田町 ~ 逗子  3区間
 品川        ~ 横浜  1区間
 品川        ~ 逗子  1区間
 横浜        ~ 逗子  1区間
 新宿        ~ 八王子  1区間
 新宿        ~ 高尾  1区間
 新宿        ~ 拝島  1区間
 渋谷        ~ 横浜  1区間
 渋谷        ~ 吉祥寺 1区間

参考:運賃改定の申請について(補足説明資料)」2024年12月6日 JR東日本

 

 

幹線区間の通学定期券は据え置き

「幹線」の通学定期券は家計負担を考慮し据え置きになりますが、値上げになる区間も存在します。ご家族に通学定期券を購入する方がいる場合は注意が必要です。

据え置き対象となる条件と区間

通学定期券の運賃据え置き対象は、「幹線」・「地方交通線」となります。「電車特定区間」「山手線内」は今まで安価な運賃でしたが、「幹線」に統合されることにより、通学定期券が値上げとなります。
下表では、東京~小田原の区間のみ据え置きとなっています。

区間 現行(通学定期1ヶ月) 改定後(通学定期1ヶ月) 差額
東京~新宿 4,610円 5,710円 1,100円
東京~横浜 8,000円 8,550円 550円
東京~大宮 8,250円 8,810円 560円
東京~千葉 9,220円 9,860円 640円
東京~小田原 20,250円 20,250円

0円

参考:「運賃改定の申請について(補足説明資料」2024年12月6日 JR東日本

6ヶ月定期の割引率の減少

割引率の大きいJRの6ヶ月定期券ですが、今回の運賃改定により平均割引率が改定前の60.3%から59.0%になります。区間によっては1%~5%程度の割引率減少があります。
JRの6ヶ月定期券は、他路線に比べ圧倒的に割引率が高いため通勤に利用する人が多いですが、改定後は他路線を利用したほうが安くなる可能性もあるので見直しの検討が必要です。

6ヶ月定期運賃の新旧の比較

区間 現行(6ヶ月定期) 改定後(IC) 差額
東京~新宿 30,270円 41,630円

11,360円

東京~横浜 70,350円 79,650円 9,300円
東京~大宮 83,160円 92,330円 9,170円
東京~千葉 95,990円 105,010円 9,020円
東京~小田原 216,280円 227,660円 11,380円
参考:JR東日本 運賃改定のお知らせ「通勤定期旅客運賃

オフピーク定期券は継続、利用可能範囲を拡大

オフピーク定期券は、平日の朝のピーク時間帯以外に利用することができる安価な定期券です。
今回の運賃改定では、オフピーク定期券対象エリアが拡大しますので、首都圏の企業は導入しやすくなります。

拡大される利用可能範囲の詳細

新たに追加されるオフピーク定期券対象エリアは、4路線18駅です。

新たにオフピーク定期券の対象となるエリア(計18駅)
路線 対象駅 ピーク時間帯
高崎線

宮原

6:40 ~ 8:10
上尾
北上尾 6:30 ~ 8:00
桶川
北本 6:25 ~ 7:55
鴻巣
宇都宮線 土呂 6:40 ~ 8:10
東大宮 6:30 ~ 8:00
蓮田
白岡 6:25 ~ 7:55
新白岡
久喜 6:15 ~ 7:45
東海道線 藤沢 6:50 ~ 8:20
辻堂 6:40 ~ 8:10
茅ヶ崎
平塚 6:30 ~ 8:00
外房線、京葉線 本千葉 6:40 ~ 8:10
蘇我
参考:JR東日本 運賃改定のお知らせ「運賃改定後のオフピーク定期券対象エリア

オフピーク定期券のメリット

オフピーク定期券は、通常の定期券料金の15%割引で購入することができます。運賃改定後も発売されている定期券の15%割引で購入が可能です。通常定期券が値上げになった分、オフピーク定期券の活用によるコスト低減も有効でしょう。

区間 現行(6ヶ月オフピーク定期券) 改定後(6ヶ月オフピーク定期券)
東京~新宿 25,610円 35,380円
東京~横浜 59,200円 67,700円
東京~大宮 69,940円 78,480円
東京~千葉 80,690円 89,250円
参考:JR東日本 運賃改定のお知らせ「オフピーク定期運賃

 

通勤手当への影響

企業側の対応ポイント

JRの普通運賃は他の鉄道会社と比べて高い傾向にありますが、6ヶ月定期券ではJRの方が安くなることが多いため、通勤定期はJRを利用している方が多いのではないでしょうか。
しかし、今回の運賃改定の値上げにより、6ヶ月定期券の料金でもJRの方が高くなる区間が出てくる可能性があります。
運賃改定に伴う通勤手当の支給見直しとして、新旧料金比較だけでなく他社路線との比較も重要です。

コスト対策としては、通勤時間の柔軟化によるオフピーク定期券の導入も選択肢の一つです。オフピーク定期券は通常の定期券よりも15%も安く購入できます。
また、定期券は開始日より14日前から購入可能です。運賃改定(値上げ)前日までに購入すれば改定前の料金で購入可能です。例えば運賃改定前日の3月13日には、3月13日~3月27日開始の定期券が改定前料金で購入できます。3月31日までの定期券がある場合は数日の重複がありますが、一時的なコスト対策になります。

今回の運賃改定は、対象エリアが広いJR東日本を利用するすべての人に影響があり、定期代支給の人も実費精算の人も変更対象となります。
従業員に再申請させる場合は、従業員への周知や、大量の申請確認、申請漏れの確認等が必要となり、管理者の業務時間は増大します。「申請しない人は適用しない」というルールにしても遅れて申請があがってきて対応するケースも多いでしょう。
従業員に再申請させず管理者側で全件再計算する場合も、大量の処理に業務時間が増大し、ミスが発生しやすくなります。早めの運賃改定への備えが必要です。

運賃改定対応のために通勤費管理のシステム化を

通勤手当の運賃改定への対応は、通勤費管理システムの「らくらく通勤費」による一括更新が有効です。

システムを利用しない運賃改定の場合は、全従業員に申請をし直させたり、全従業員分の通勤経路を調べ直したりする手間が発生し、膨大な時間が必要となります。過去の運賃改定では、改定後の新料金支給が間に合わず、後追いで差額支給をされてきた担当者様もいらっしゃるでしょう。
「らくらく通勤費」の運賃改定機能なら、対象者を抽出して一括で料金変更が可能です。管理担当者の操作のみで完結するため、従業員からの申請不要、また作業時間も10分程で完了します。

運賃改定機能の他にも、住所同士での経路検索や、社内規定に沿った経路のみを表示する機能、定期券の払い戻し計算、車・バイク通勤の距離測定や計算、通勤手当に関する課税・社保・雇保計算など、通勤手当に関することはオールインワンで対応します。

運賃改定の対応をきっかけに、是非一度検討してみてはいかがでしょうか。