新幹線通勤の補助制度とは?手当支給時の注意点や税金への影響を解説

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今までは”入社後に配属された職場への通勤距離が遠い”、”転居や異動で通勤距離が伸びた”等の理由で利用されることの多かった新幹線通勤ですが、近年では柔軟な働き方の実現などを目的として認める企業も増えてきています。

新幹線通勤は、労働者目線で見ると就職活動や住居選びの選択肢が広がり、企業目線で見ても優秀な人材の確保や、従業員の定着率向上、柔軟な働き方の実現がしやすくなるため双方にメリットがあります。

しかし、新幹線通勤はまだ一般的とは言えず、導入を検討する企業にとってハードルが高いと感じられるケースも少なくありません。

今回は、新幹線通勤の補助制度や、メリット・デメリット、社会保険料や税金への影響など新幹線通勤の導入を検討するうえで必要な情報を解説します。

新幹線通勤の補助制度とは?

新幹線通勤の補助制度は主に2つあります。企業が支払う通勤手当と、自治体から支給される補助金です。

どちらも必ず補助が受けられるというものではなく、企業や自治体により制度の有無や条件が異なります。また、補助や補助金の対象となる期間と金額も制度ごとに異なる点も注意が必要です。

補助制度を利用するには申請手続きなどが必要ですが、条件に合致すると新幹線通勤のコストを大幅に削減できます。

企業からの通勤手当

企業から通勤手当として新幹線代を支給する場合は、在来線による通勤が困難もしくは著しく時間がかかるなど、新幹線通勤が「最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法」と考えられる場合のみ認めるケースが多いです。

「最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法」というのは、通勤手当を非課税で支給する際の条件の一つであるため、企業が定める通勤手当の支給条件としても広く用いられています。

新幹線通勤が「最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法」と言えない場合でも、企業が新幹線代を支給することは可能です。しかし、その場合の通勤手当は課税対象になります。

また、新幹線通勤が「最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法」である場合も、ひと月当たりの通勤手当で15万円を超える部分は課税対象です。

自治体からの補助金

一部の自治体では、地方移住や定住の促進策や生活しやすい環境づくりの一環として、新幹線通勤をしている住民に対し補助金を支給しています。

補助金の対象となる条件としては、自治体に住民票があることや、年齢、通勤区間、長くその自治体に居住する意思の有無などを挙げていることが多いです。
補助の内容や条件は自治体ごとに異なりますので、自治体ごとのサイトで確認して下さい。

また、補助の申請が通れば際限なく補助金を受け取れるというわけではなく、上限金額や支給期間が決まっていますので、事前にいくらをいつまで受け取れるのか確認しましょう。
上限金額は自治体にもよりますが、月額2万円〜3万円程度であることが多いです。

以下は補助を行っている自治体の一例です。※2026年1月時点
埼玉県熊谷市、埼玉県美里町、栃木県宇都宮市、栃木県栃木市、栃木県小山市、栃木県那須塩原市、群馬県みなかみ町、長野県佐久市、新潟県湯沢町、福島県白河市、石川県小松市、富山県黒部市、鹿児島県薩摩川内市、佐賀県武雄市 等

新幹線通勤手当を支給する際の注意点

企業として新幹線通勤を認めて通勤手当を支給する際には、従業員とのトラブルや計算ミスを避けるため以下のことに注意しましょう。

支給対象者を不当に選んではいけない

通勤手当は給与の一部なので、同一労働同一賃金の原則に則り支給する必要があります。
厚生労働省のガイドラインでは、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張旅費を支給しなければならない。」との記載があります。

例えば、「正社員のみ通勤手当として新幹線代を支給し、同じ新幹線で通勤するパート社員には新幹線代を支給しない」ということは認められません。

支給対象者を限定する場合は、雇用形態を理由とした条件を設定しないようにしましょう。

支給対象は自由席を利用した場合のみ

新幹線には自由席、指定席、グリーン車などの種類がありますが、非課税の通勤手当として支給できるのは自由席の金額のみです。

新幹線によっては、乗客が多く座席を確保するのが困難な場合もありますが、それを理由に指定席等の割増料金を通勤手当として支給する場合は課税対象と判断される可能性が高いです。

ただし、東北新幹線の盛岡~新青森間や北海道新幹線などの全車指定席列車では、定期券を持っていれば指定席の予約がなくても空席に乗車可能というルールがあり、その場合の定期券代は非課税通勤手当として認められます。

社会保険料の算出に影響を及ぼす

社会保険料は給与総額をもとに算出されます。通勤手当は給与の一部であるため全額が対象となります。
課税・非課税に関わらず全額が対象という点に注意が必要です。

給与額が高くなるほど社会保険料も高くなりますので、新幹線通勤は他の通勤手段に比べ社会保険料が高くなりやすいです。新幹線通勤を認める際はその点もご承知おきください。

関連記事:通勤定期代支給と標準報酬月額の計算方法!社会保険料への影響と処理ポイント

新幹線通勤の定期券代の目安

新幹線定期券は、特急料金が含まれるため在来線の定期券よりも高額です。
この価格設定は、高速運行を支える高い安全基準の維持や、車両・線路などの保守に多額のコストがかかるため必要なものです。

新幹線定期券の金額は、距離や路線、定期券の通用期間、座席種別(自由席、指定席、グリーン車)などにより異なります。一般的には、距離が長い程高額になりやすく、定期券の通用期間は1ヶ月よりも3ヶ月の方がお得です。

区間別料金の目安

以下は一例として、主要区間の新幹線定期券代です。

▼東海道新幹線

区間 1ヶ月

3ヶ月

東京~小田原 73,930円 210,710円
東京~熱海 86,990円 247,960円
東京~三島 93,930円 267,690円
※2026年1月時点

▼東北新幹線

区間 1ヶ月

3ヶ月

東京~宇都宮 103,940円 296,200円
東京~那須塩原 132,120円 376,550円
東京~新白河 145,160円 413,680円
※2026年1月時点

▼上越新幹線

区間 1ヶ月

3ヶ月

東京~熊谷 71,260円 203,100円
東京~高崎 103,600円 295,270円
東京~越後湯沢 151,620円 432,100円
※2026年1月時点

新幹線通勤の定期券代は区間により異なりますが、通勤手当として支給するのは月額5万円〜15万円程度が目安です。15万円を超えて通勤手当を支給する際は、超えた金額を課税対象にするのを忘れないようにしましょう。

新幹線の定期券を購入する際に気を付けるポイント

新幹線の定期券には、購入時に気を付けるべきポイントがあります。新幹線通勤を認める企業や通勤手当の管理者も把握しておくとよいでしょう。

JR九州以外は6ヶ月定期券は販売していない

新幹線の定期券は、通用期間が1ヶ月と3ヶ月の2種類であることが多く、2026年1月時点で6ヶ月定期券を販売しているのはJR九州の新幹線のみです。

全国に拠点のある企業は、新幹線利用者の中でJR九州の新幹線を利用している人がいないか確認しましょう。

異なる会社の2路線区間では購入できない

基本的には、異なる会社の2路線区間では新幹線定期券を購入できません。

たとえば、大宮駅から東京駅までを東北新幹線、東京駅から小田原駅までを東海道新幹線に乗る場合、通常の乗車券の購入は問題なく行えますが、東北新幹線と東海道新幹線は運営会社が異なるため、大宮~小田原区間の定期券は販売されていません。

ただし、例外としてJR東海の東海道新幹線とJR西日本の山陽新幹線は、両路線にまたがった区間の定期券を購入することができます。

そもそも新幹線定期券の区間が限られている

新幹線の定期券は、どの区間でも購入できるわけではありません。
区間によっては定期券の販売がなく、通常の乗車券を購入するしかないこともあります。

新幹線の区間距離が300kmを超えると定期券の販売がない可能性が高いです。たとえば東京発の東海道新幹線の場合、東京~豊橋区間(約294km)までは定期券の販売がありますが、東京~名古屋区間(約366km)の販売はありません。

新幹線と在来線にまたがる定期券も経路により購入可能かが異なります。購入可能な定期券区間は、JR各社のホームページやみどりの窓口で確認できます。

新幹線通勤をするメリット

新幹線通勤には、従業員側にもメリットがあります。そのメリットをいくつかご紹介します。

家賃が安い地域に住める

勤務先が都心にある場合は、在来線で通える範囲の物件の家賃が高く理想の家に住めないことも多いです。しかし、新幹線通勤が可能な場合は家賃を大幅に下げられるので、住まいに関する希望を叶えやすくなります。

例えば、東京新宿区の家賃相場は13.5万円程ですが、小田原駅周辺の家賃相場は6.7万円なので約半分です。広い家に住みたい場合や、車を持ちたい場合には、その差が更に大きくなります。

例として新宿区と小田原駅周辺の家賃相場と3ヶ月定期券代の合計金額を見てみましょう。

▼新宿区
3ヶ月定期券代:17,920円
1Kの家賃相場:12.8万円×3ヶ月=38.4万円・・・定期券代と合わせて3ヶ月の合計金額は約40.2万円
1LDKの家賃相場:22.3万円×3ヶ月=66.9万円・・・定期券代と合わせて3ヶ月の合計金額は約68.7万円

▼小田原駅周辺
3ヶ月定期券代:210,710円
1Kの家賃相場:7.0万円×3ヶ月=21.0万円・・・定期券代と合わせて3ヶ月の合計金額は約42万円
1LDKの家賃相場:10.8万円×3ヶ月=32.4万円・・・定期券代と合わせて3ヶ月の合計金額は約53.4万円

1Kの狭い部屋と定期券代の合計は新宿区の方が安いですが、1LDKの少し広い部屋になると小田原駅周辺の方が合計金額が安くなりました。
企業から通勤手当として新幹線代を支給できない場合でも、金額的なメリットがありそうです。

区間によってはほぼ確実に座席に座ることが可能

在来線で都心に通う場合は、通勤ラッシュ時間帯の満員電車に乗らなければならないケースがほとんどかと思います。通勤ラッシュ時間帯は、座席に座るのが困難であったり、満員のため電車を数本見送ったりなど、快適な通勤とは言い難いです。
また、乗客同士の距離が近く、トラブルに巻き込まれるリスクが高いこともストレスの原因となります。

しかし、新幹線通勤では乗車区間にもよりますが、ほぼ毎日座席に座れるというケースも多く、座席に座れなくても比較的人との距離を取りやすいため快適に通うことができます。

毎日のことなのでこの差は大きく、心身の疲労度合いは仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします。

移動時間を有効活用できる

新幹線通勤をしている方の中には、資格の勉強やプレゼンの準備をするという方もいます。
在来線と違い他の人との距離を保てるので、移動時間を有効活用しやすい点も新幹線通勤のメリットです。

移動時間はできることが限られるからこそ、集中して自己研鑽の時間に充てられます。
現代では勉強にもスマホやタブレット、PCなどを利用する方も多いですが、車両や座席によってはWi-Fiサービスの利用や電源コンセントの利用が可能なのも嬉しいポイントです。

新幹線通勤をするデメリット

メリットもあれば、当然デメリットもあります。新幹線通勤のデメリットについてもいくつかご紹介します。

定期券代が高く通勤手当を上回る可能性もある

先にも触れた通り、新幹線の定期券代は特急料金を含むため高額になります。

法律上は企業側に通勤手当の支給義務がないため、通勤手当の上限金額や、新幹線代を支給するかは企業側で決められます。そのため、企業によっては新幹線通勤定期券代の一部または全額を従業員負担としている場合もあります。

従業員に「新幹線通勤をしたい」と言われた際は、社内規定に則り企業側と従業員側の負担額がいくらになるのかを説明しましょう。

本数が限られている

余裕を持って行動するのが苦手な人にとって大きなデメリットとなるのが、新幹線の本数が限られているという点です。

都心であれば在来線の通勤ラッシュ時間帯は、2分~5分間隔で次の電車が来ることも多いですが、新幹線は少し間隔が長めになります。

東海道新幹線の小田原発で時刻表を調べると、最も運行本数の多い7時台では、10分間隔で運行されています。
東北新幹線の宇都宮発では7時台で7~12分間隔の運行、上越新幹線の熊谷発は8時台で5分~9分間隔の運行(ただし8時38分の後は9時3分)です。※2026年1月現在
余裕を持って出社する方は問題ない範囲かと思いますが、始業時間ギリギリに着くように出社する方は、1本の遅れの影響が大きくなりますので注意が必要です。

また、在来線よりも終電が早いことから、残業で終電を逃した場合のタクシー代や宿泊代の負担をどうするかという取り決めをしている企業もあります。

長時間の移動で体が疲れる

新幹線通勤は、都心の在来線の通勤ラッシュと比べると快適に通えるものの、長時間の移動は体に疲労が蓄積しやすくなります。また、通勤時間が長くなると十分な睡眠時間の確保が難しくなりやすいので、疲れが取れず仕事のパフォーマンスが低下する可能性もあります。

こうした背景から、自宅から勤務先までの通勤時間の上限を社内規定で定める企業もあります。

新幹線通勤手当が社会保険料や税金に与える影響

これまでも度々触れましたが、通勤手当は社会保険料や税金の計算に影響があります。その影響を改めて整理します。

関連記事:通勤手当の計算方法って?課税ルールや支給時の注意点を解説

社会保険料が高くなりやすい

社会保険料は給与総額をもとに算出され、通勤手当は給与の一部であるため全額が対象です。
給与額が高くなるほど厚生年金や健康保険の保険料などの社会保険料が高くなりますので、新幹線通勤は他の通勤手段に比べ社会保険料が高くなりやすいと言えるでしょう。

従業員目線で見ると、短期的には手取り額が減りデメリットに見えますが、老後の年金受給額の増加や、現役時代の保障(傷病・障害・遺族)が増えるメリットもあります。

非課税限度額を超えると課税対象になる

通勤手当は、「最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法」と認められる場合、ひと月当たり15万円まで非課税で支給できます。
しかし、新幹線定期券は高額であるため15万円を超える可能性があります。ひと月15万円を超えて通勤手当を支給する場合は、超えた部分が所得税や住民税の課税対象となります。

また、新幹線通勤が「最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法」と認められない場合や、指定席などの割増料金を企業側が支払う場合は非課税の対象となりませんのでご注意ください。

通勤手当の申請は「らくらく通勤費」

通勤費管理システムの「らくらく通勤費」では、新幹線通勤の申請にも対応しています。
管理者側の設定で、新幹線を利用した経路を候補として表示するかを選択でき、金額や時間、乗り換え回数で表示する経路の制御も可能です。
自宅と勤務地の住所で経路検索ができるので、経路の妥当性チェックが楽になります。

社会保険料の計算や課税計算、払戻計算、給与システムへ連携するデータの出力もできるので業務効率化や省力化を実現します。
公共交通機関だけでなく、車やバイク、自転車等の交通手段にも対応しています。

 

まとめ

今回は新幹線通勤の補助制度や、手当支給時の注意点、メリット・デメリット、社会保険料や税金への影響などを解説しました。

優秀な人材の確保や、従業員の定着率向上、柔軟な働き方の実現を課題としている企業は、新幹線通勤制度の導入を検討してみる価値があります。

新幹線通勤に限らず、通勤手当関連の業務は「らくらく通勤費」で効率化できます。
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