賞与計算のやり方を4ステップで解説!社会保険料・所得税の計算例も紹介

この記事の目次

賞与計算は、総支給額の確定、社会保険料・雇用保険料の計算、源泉所得税の計算、差引支給額の計算の4つのステップで進めます。
本記事では、各企業の給与計算担当者向けに、各ステップの計算方法と賞与額が50万円の場合の計算例、源泉所得税の計算に用いる算出率の表が使えないケースや、2026年4月分以降の子ども・子育て支援金の控除など担当者が注意すべきポイントを解説します。

賞与計算とは?毎月の給与計算との違い

賞与計算とは、従業員に支給する賞与について、支給額から社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)、雇用保険料、所得税などを控除し、手取り額を計算する業務です。毎月の給与計算との相違点は、標準報酬月額ではなく「標準賞与額」に基づき社会保険料等を計算する点、源泉所得税を給与所得の源泉徴収税額表ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」により計算する点、住民税が控除されない点の3点です。

社会保険上の「賞与」は年3回以下の支給が対象

社会保険料の計算における「賞与」とは、賃金、給与、俸給などの名称にかかわらず、労働の対償として受けるもののうち、年3回以下で支給されるものです。一方、年4回以上で支給されるものは賞与ではなく「報酬」にあたり、標準報酬月額の算定の対象となります。給与計算担当者は、一般的な賞与(ボーナス)のほかに、決算賞与などの臨時で支給されるものも含めて、年間の支給回数を把握する必要があります。

賞与から控除するもの・控除しないもの

賞与計算にあたり、賞与から控除するもの、しないものについて区別する必要があります。具体的には下表の通りです。

控除するもの

控除しないもの

健康保険料

介護保険料

子ども・子育て支援金(2026年4月分~)

厚生年金保険料

雇用保険料

所得税

住民税(毎月の給与のみから天引き)

労災保険料(事業主全額負担)


賞与計算の流れ【4ステップ】

本章では、賞与計算の流れについて以下の4つのステップに分けて解説します。
STEP1で総支給額の確定
STEP2で総支給額から控除する社会保険料や雇用保険料の計算
STEP3で源泉所得税の計算
STEP4で差引支給額(手取り額)の計算

STEP1:賞与の総支給額を確定する

就業規則や賃金規程、賞与規程等に基づき、賞与の総支給額を計算します。
就業規則などには賞与を支給する場合は、算定対象時期、算定基準、計算方法、支払方法等を明確に定めるため、その内容に基づき計算します。支給日在籍要件が定められている場合には、要件を満たすことを確認します。
計算にあたっては基本給や役職、勤務期間、業績評価などの支給基準に応じて加算・減算を行います。欠勤・休職期間や在籍期間による減額等の取扱いについても規程に沿って確認し、計算に反映します。
なお、賞与の総支給額は、社会保険料や所得税を控除する前の金額で確定する必要があります。


STEP2:社会保険料・雇用保険料を計算する

次に賞与にかかる社会保険料、雇用保険料を計算します。

社会保険料の計算

賞与にかかる社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)と子ども・子育て支援金は、原則として税引き前の賞与の総支給額の1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、それぞれの保険料率を乗じて計算します。
この標準賞与額には上限があり、健康保険、介護保険、子ども・子育て支援金は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計額で573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限(同月内に複数回支給される場合は合算額で上限を適用)です。

保険料は原則として事業主と従業員が折半して負担します。従って従業員負担分の計算式は以下の通りです。
標準賞与額×各保険料率または子ども・子育て支援金率÷2

雇用保険料の計算

賞与にかかる雇用保険料は、賞与の総支給額に雇用保険料率を乗じて計算します。社会保険料のように「標準賞与額」を用いず、総支給額(端数整理も行わない)が計算の基礎となります。
なお、雇用保険料率は事業の種類や従業員と事業主で異なる(事業主負担分の方が大きい)ため、計算の際に注意が必要です。従業員負担分の計算式は以下の通りです。
賞与総支給額×雇用保険料率(従業員負担分)

なお、産前産後休業中や育児休業中の社会保険料は申し出により事業主・従業員分双方の保険料が免除されるほか、徴収が不要になるケースもあります。詳細については以下の関連記事と参考サイトをご参照ください。

関連記事:【賞与の社会保険料の計算方法】社会保険料がかからないケースや注意点をわかりやすく解説
参考:厚生労働省|事業主・被保険者の皆さまへ令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内

STEP3:源泉所得税を計算する

賞与にかかる源泉所得税は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて、以下の計算式により算出(計算結果の円未満の端数は切り捨て)します。
なお、賞与から控除すべき社会保険料等は、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料、子ども・子育て支援金等です。
(賞与の総支給額-賞与から控除すべき社会保険料等の額)×賞与の金額に乗ずべき率

賞与の金額に乗ずべき率(=税率)は、以下の手順で確定します。
① 前月中の給与(賞与を除く)の額-前月中の給与にかかる社会保険料等の額を計算
② 扶養控除等申告書で申告した扶養親族等の数を確認
③ 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の「甲欄」にて①②の両方を満たす「賞与の金額に乗ずべき率」を確定
※扶養控除等申告書の提出がない従業員については「乙欄」により確定。

令和8年分の源泉徴収税額の算出率の表については、令和7年度税制改正を受けて税額や扶養親族等の数の算定方法が変わっているため、必ず最新の表を使用しましょう。

参考:国税庁|賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)
参考:国税庁|No.2523 賞与に対する源泉徴収

STEP4:差引支給額(手取り額)を出し賞与明細を交付する

STEP1~3で算出した額をもとに、差引支給額(手取り額)を算出します。計算式は以下の通りです。

差引支給額=総支給額(STEP1)-社会保険料等(STEP2)-源泉所得税(STEP3)

差引支給額を算出したら、賞与明細を作成して支給対象の従業員に交付します。
賞与明細の交付は所得税法第231条により事業主(支払者)に義務付けられており、総支給額、控除項目(社会保険料等や所得税)と金額の内訳、差引支給額は必ず記載します。

【計算例】賞与50万円の場合の控除額と手取り額

本章では、以下の前提条件に基づき、賞与が50万円の場合の控除額と手取り額を計算します。

■前提条件
・賞与総支給額:50万円
・従業員の年齢:45歳(介護保険の第2号被保険者)
・加入する健康保険:協会けんぽ(東京支部)
・会社の事業の種類:一般の事業
・扶養親族等の数:1人
・前月給与:30万円(通勤手当不支給)

社会保険料・子ども・子育て支援金・雇用保険料の計算例

① 社会保険料・子ども・子育て支援金の控除額

標準賞与額を50万円として以下により計算します。

健康保険料・介護保険料
500,000円×11.47%(健康保険料率9.85%+介護保険料率1.62%)÷2=28,675円

子ども・子育て支援金
500,000円×0.23%(子ども・子育て支援金率)÷2=575円

厚生年金保険料
500,000円×18.3%(厚生年金保険料率)÷2=45,750円

② 雇用保険料の控除額

賞与の総支給額50万円に基づき、以下により計算します。
500,000円×5/1000(一般の事業・労働者負担分の雇用保険料率)=2,500円

以上により、社会保険料等の控除額は
28,675円+575円+45,750円+2,500円=77,500円
と計算されます。

参考:全国健康保険協会|令和8年3月分からの保険料額表 東京支部
参考:厚生労働省|令和8(2026)年度雇用保険料率のご案内

源泉所得税と手取り額の計算例

源泉所得税の計算にあたり、以下により「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に基づき「賞与の金額に乗ずべき率(=税率)」を確定します。

① 前月の社会保険料等の控除後の給与の額の算出
前月の給与の額は300,000円につき、協会けんぽ(全国健康保険協会)の保険料額表により、標準報酬月額も300,000円と確認できるため、 前月の社会保険料等は以下の通り計算されます。

健康保険料+介護保険料=300,000円×11.47%÷2=17,205円
厚生年金保険料=300,000円×18.3%÷2=27,450円
子ども・子育て支援金=300,000円×0.23%÷2=345円
雇用保険料=300,000円×5/1000=1,500円

前月の社会保険料等=17,205円+27,450円+345円+1,500円=46,500円
前月の社会保険料等控除後の給与の額=300,000円-46,500円=253,500円

② 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表により「賞与の金額に乗ずべき率(=税率)」を確定
社会保険料等控除後の給与の額は253,500円であるため、算出率の表の「甲欄」、扶養親族等の数「1人」、社会保険料等の控除後の給与の額「250千円以上289千円未満」に基づき、賞与の金額に乗ずべき率は4.084%で確定できます。

続いて、源泉所得税の額および手取り額を算出します。
前項で計算した賞与にかかる社会保険料等の額は77,500円であるため、源泉所得税は以下の通りです。
源泉所得税=(500,000円-77,500円)×4.084%=17254.9≒17,254円(円未満切捨て)

従って手取り額は以下の通り計算されます。
手取り額=500,000円-77,500円-17,254円=405,246円

参考:国税庁|賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)

所得税の計算で「算出率の表」を使えないケース

本章では、賞与にかかる源泉所得税の計算で「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使えないため、給与所得の源泉徴収税額表(月額表)を使用するケースを2つ紹介します。

前月に給与の支払いがない場合

以下の手順により源泉所得税を計算します。

①    (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または「12」)を計算
②    ①で計算した金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて税額を確定
③    ②で算出した税額×6(または「12」)が賞与にかかる源泉所得税額

※上記の計算式で、賞与の計算期間が6ヶ月を超える場合には12を用います。

賞与が前月給与の10倍を超える場合

社会保険料等を控除した賞与の額が、前月の社会保険料等を控除した給与の額の10倍を超える場合、以下の手順により源泉所得税を計算します。

① (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または「12」)を計算
② 上記①+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)の金額を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて税額を確定
③  ②の税額-(前月の給与に対する源泉徴収税額)を計算
④  ③の税額×6(または「12」)が賞与にかかる源泉所得税額

※上記の計算式で、賞与の計算期間が6ヶ月を超える場合には12を用います。

参考:国税庁|No2523 賞与に対する源泉徴収
参考:国税庁|給与所得の源泉所得税額表(令和8年分)

賞与計算で給与担当者が注意したいポイント

本章では賞与計算にあたり、給与計算担当者が注意したいポイントを紹介します。
具体的には以下のポイントです。

・2026年4月分(5月納付分)より徴収が開始された子ども・子育て支援金
・前月給与の通勤手当の扱い
・賞与支払届の提出
・退職予定者・育児休業中の従業員の社会保険料

2026年4月分から子ども・子育て支援金の控除が始まった

子ども・子育て支援金は、子ども・子育て支援のための政策を拡充するため、2026年4月分(5月納付分)から健康保険の保険料とあわせて徴収されることになりました。給与だけでなく、賞与についても標準賞与額×子ども・子育て支援金率により支援金額を算定し、社会保険料と同様に事業主と従業員が折半して負担します。会社員等が加入する被用者保険の子ども・子育て支援金率は全国一律で、2026年度は0.23%です。
子ども・子育て支援金の控除を忘れると賞与計算の結果に影響しますので注意しましょう。

前月給与の通勤手当の扱いで所得税の算出率が変わる

賞与計算で用いる「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」では、「前月の社会保険料等の控除後の給与の額」を確認する必要がありますが、通勤手当がこの額に影響を及ぼし、算出率が変わる場合があるため注意が必要です。
通勤手当による影響は以下の通りです。

非課税限度額内の通勤手当による影響
非課税限度額内の通勤手当については、給与の額に含めないようにします。これを含めると所得税が過大に計算されることになります。逆に非課税限度額を超えた通勤手当については給与の額に含めます。なお、交通機関を利用する場合の通勤手当の非課税限度額は1ヶ月15万円です。

社会保険料の計算における影響
社会保険料の計算で用いる報酬(標準報酬月額)の額には通勤手当を含めるため、これを含めずに計算した場合には社会保険料等の額が過少になり、その結果「社会保険料等控除後の給与の額」が過大になります。結果として所得税が過大に計算されることになります。社会保険料の計算では通勤手当を必ず含めるようにします。

参考:国税庁|通勤手当の非課税限度額の改正について

賞与支払届は支給日から5日以内に提出する

賞与支払届は、事業主が被保険者に賞与を支給した際、賞与支給額を届け出るための書類です。原則として、賞与を支給した日から5日以内に電子申請、郵送、または窓口持参等により提出します。提出先は加入する健康保険が協会けんぽの場合は、事務センター(日本年金機構)または年金事務所です。
この届出に基づき、標準賞与額が決定され、健康保険・厚生年金保険等の保険料や将来の年金額の計算に反映されます。
なお、産前産後休業や育児休業による保険料免除期間中や、標準賞与額の上限を超えた場合でも提出が必要ですので注意が必要です。

参考:日本年金機構|従業員に賞与を支給したときの手続き

退職予定者・育児休業中の従業員は社会保険料の扱いが変わる

退職予定者について
社会保険料は被保険者資格取得月から資格喪失月の「前月」まで発生します。退職する場合の資格喪失日は退職日の「翌日」ですので、退職日によって社会保険料の扱いが以下の通り変わります。

・退職日が月末日以外:資格喪失月は退職月→退職月の社会保険料は発生しない
・退職日が月末日:資格喪失月は退職月の「翌月」→退職月も社会保険料が発生

従って、退職日が月末日でない従業員に退職月に支給した賞与に対して社会保険料は発生しません。

育児休業中の従業員について
賞与が支給される月の末日が育児休業期間中の場合、その賞与にかかる社会保険料は免除されますが、育児休業を「賞与支給月の末日を含む、連続して暦日で1ヶ月超取得した場合」が要件になります。(2022年10月より)

なお、雇用保険料や源泉所得税にはこのような取扱いはありませんので、通常通り控除します。

詳細については以下の関連記事をご参照ください。

関連記事:【賞与の社会保険料の計算方法】社会保険料がかからないケースや注意点をわかりやすく解説
参考:日本年金機構|退職した従業員の保険料の徴収
参考:日本年金機構|従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き

保険料率・税額表は毎年改定されるため最新版で計算する

保険料率や税額表は毎年改定されるため、賞与支給月に適用される最新のものを確認し、それに基づき計算するよう注意しましょう。

なお、保険料率や税額表の改定時期は以下の通りです。
・健康保険料率・介護保険料率(協会けんぽ):毎年3月
・雇用保険料率:毎年4月(年度単位)
・厚生年金保険料率:平成29(2017)年9月以降改定なし
・源泉徴収税額表:毎年1月(年単位)

通勤手当を正確に管理して賞与計算のミスを防ぐ(らくらく通勤費)

賞与に対する源泉所得税の計算では、「前月の社会保険料等控除後の給与額」をもとに税率(賞与の金額に乗ずべき率)を判定します。この際、非課税となる通勤手当は給与額に含めない一方で、社会保険料の計算では通勤手当を含めた標準報酬月額が用いられるため、通勤手当の計算や管理を誤ると賞与の所得税計算にも影響が及ぶ可能性があります。

特に、通勤経路の変更や定期代の改定、マイカー通勤距離の変更などは更新漏れが発生したやすいですが、適切に管理することが重要です。
「らくらく通勤費」は、通勤経路や支給額を一元管理し、経路検索や通勤費計算を自動化できるクラウド型通勤費管理システムです。
運賃改定や異動時の変更にも対応できるため、通勤費管理の効率化と計算精度の向上を実現します。正確な通勤手当管理によって、賞与計算のミス防止にもつながります。

まとめ

本記事では賞与計算について解説しました。その要点は以下の通りです。
給与計算担当者においては、本記事の内容を改めて念頭に置き、正確な賞与計算業務を心がけましょう。

・賞与計算は、賞与の総支給額確定、社会保険料・雇用保険料の計算、源泉所得税の計算、差引支給額(手取り額)の計算の4ステップで進める
・社会保険料等は標準賞与額、所得税は算出率の表で計算し、住民税は控除しない
・2026年4月分から子ども・子育て支援金の控除開始に注意する
・前月給与の額や通勤手当の管理が賞与計算の正確さにつながる